転載:朝日新聞「地震、濁り引かぬ川 反物洗えず伝家の藍染断念 宮城」

栗原市栗駒文字の千葉家に伝わる「正藍染(しょうあいぞめ)」。自然発酵させた藍を使って染め、家の前の二迫川の清流で洗い清めているが、地震後、川の水が濁り、洗えない状況が続く。3代目の千葉まつ江さん(78)は今季、「大きな反物はもう染められない」とこぼした。
 日本最古の染色技法とされ、初代の故あやのさんは国の重要無形文化財保持者(人間国宝)で、2代目のよしのさん(98)は県の無形文化財保持者の認定を受けた。
 自然発酵のため、染色できるのは6月初めからの1カ月だけ。洗い流すのに水道水は使わない徹底ぶりで、川の水が使えないため、裏山から引いている沢の水をおけにためて使っている。このため、洗えるのはのれんやハンカチなどの小物だけだ。
 まつ江さんによると、染色用具に被害はなく、染色の液がたるからこぼれた程度だったという。川の水はこれで「大雨でも1、2日できれいになったのに、今回はだめ」。梅雨の時期も迎え、反物はあきらめたという。例年30〜40反染めていたが、今年は地震前に15反ほど染めただけで終わった。
 まつ江さんは「心が落ち着かないと良い染め物ができない。いつきれいになるのか。早く回復してほしい」と話している。

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