朝日新聞「天声人語」宇宙飛行士の夫婦

この文章を宇宙飛行士の山崎直子さんを野口聡一さんに置き換え、
パートナーの山崎大地さんを野口聡一さんのパートナー美和さんに置き換えて、読んでみましょう。
いかがでしょうか。「単なる美談を超えた」美談なんでしょうか。妻がやっていることは当たり前なのでしょうか。
これを書いている朝日新聞論説委員のあなたこそが「男女同量ではない」のです。
そこに気づいてください。
2010年4月7日(水)付 朝日新聞「天声人語」
 女優の故沢村貞子さんに「男女同量」という随筆がある。ある日、新しい夫婦茶碗(めおとぢゃわん)を買いに行った。気に入ったのを眺めていてふと気づくと、紺と赤の色は違うが、二つは同じ大きさである▼男物の傍らに小ぶりな女物がそっと寄り添う。そうした夫婦茶碗を見慣れた目には新鮮だった。買って帰り、食卓に並べてみた。同じ大きさが「嬉(うれ)しかった」と沢村さんはつづっている。その一文を、宇宙飛行士の山崎直子さんが夫に支えられて飛び立ったニュースに思い出した▼頭では分かっていても、「男女同量」的な夫婦の実践は難しい。山崎大地さんの場合も単なる美談ではなかったようだ。仕事をやめて家事や育児、介護もこなしてきた。小紙の別刷りに連載した「新宇宙家族」には複雑な胸の内がにじんでいた▼葛藤(かっとう)の中、夫は心身の調子を崩す。妻も追い込まれた。すべて崩壊しかねない危機を、米国の神学者ニーバーの一節に支えられたと、直子さんは自著に書く▼〈神よ、変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ〉(大木英夫訳)。宇宙飛行も生身の人間の営みなのだと、改めて思う▼沢村さんに話を戻せば、男女同量の茶碗でつい食べ過ぎたそうだ。使うに難しいと悟るが「何とか上手に使いこなしたい」と結んでいる。同量の茶碗に、妻の幸と夫の幸を上手に盛り合う時代と心得たい。夫婦でいっぱいの地球を眺めて、宇宙船は回っている。

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