12,13日は同志社大学大学院総合政策科学研究科の修士論文公聴会だった。
ソーシャル・イノベーション研究コースの修士論文はこれで4期目になった。たしか37本くらいになったのではないかと思う。今期のものはまだ全部読んだわけではないが、発表はほとんど拝聴した。また今期は初めて博士後期課程の学位論文、つまり博士論文の審査にも関わった。
今期の論文の指導や査読を行って、ようやく解ってきたのは、このコースで書かれる学位論文では単に実践現場を記述すれば良いのではなく、「ソーシャル•イノベーションの創出プロセス」を描き出す必要があるということだ。
ソーシャル•イノベーションの創出プロセスとは、まず自分自身の社会への思いからスタートする。
続いて、ステイクホルダーとの協働関係の創出。この協働関係がクラスターになる。これは政策ネットワークとも言える。このクラスターあるいはネットワークを活用した独創的な社会サービスの開発を行うまでが「ソーシャル•イノベーションの創出プロセス」の前半部分だ。
この社会サービスを社会のなかで実際に運用してみる。そして実際に社会サービス事業を運営してみると、①想定通りの良い結果が得られる。②想定外の良い結果が得られる。③想定通りにはうまくいかない。④予想外に全くダメ。など、いろんなことが起こる。そうして、とくに②に注目して、偶然を必然に変えていく。そうして、社会からの支持(お役にたつ)ことがわかってくる。
そして、ここで終わってはいけないのだ。
自分の社会実践の成功だけに終わったら、ソーシャル・イノベーションはそこでストップしてしまう。ここから次の「希望への戦略」を描く必要がある。自分の実践はどのようにモデルとなり、同様のサービスが求められるところで、適用できるようになるか。そういう「戦略」を描く必要があるのだ。つまりソーシャル・イノベーション研究コースの論文では、こうしたプロセス全体を描き出す必要があるのだ。昨年そして今年の院生の論文を読みながら、ますますその確信が強くなった。
つまり演劇に例えれば「舞台の上」だけ、あるいは「お客さんからの反応」だけを書けばいいのではない。演劇の興行主、つまりプロデューサーの観点で、芝居小屋さがし、スポンサー探し、演出家や脚本家選び、役者のオーディション、稽古、その一方で美術や道具、広報宣伝、チケット売り。などなどである。さらには、この演劇作品が他の地域で上演されていくための戦略を考えることである。これには小劇場運動のような方法も、劇団四季のような方法もあるだろう。
というわけで、ソーシャル・イノベーション研究コースのみなさん。(ってここで見てるのは数人と思うが)ソーシャル・イノベーションの創出プロセスと、ステイクホルダーとの相関関係をちゃんと書いてくださいね。そして、「希望の戦略」もね。